木漏れ日に身をゆだねいて一抹の |
幸感じおり呼吸苦のなか |
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落ちてゆくその瞬間まで燃ゆる赤 |
この寒椿にまた魅かれ来る |
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寒椿落ちて尚燃ゆ山路を |
後ろ手で独り歩いてゆかむ |
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愚痴一つ云わない母を想いだす |
吾が子に残せる言葉を捜す夜 |
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踏まれいるタンポポの土を撫でてやる |
我が身にも似て愛ほしくなり |
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聴診器にアトムや鈴をぶらさげて |
障害児を診る医師のやさしさ |
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室温湿度保ちて昼夜看取りいる |
器械呼吸の児と母の愛 |
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予期しない強度の地震に戸惑いて |
痴呆の如く落ち着かずいる |
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お彼岸の中日の地震とは不吉だと |
友は長なーがと説法をする |
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地震後は通話も出来ず一夜明け |
次々と電話の励ましに泣ける |
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「春 暁」 |
糸島郡二丈町 楢崎 恒基 |
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春暁のうす雲紅く映り染む筑紫の里は靄に沈めり |
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雪に照る吾妻小富士に浮雲の流れかかりて春は近しも |
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春早き玄界島に地震狂ふ暖流近く豊かなりしに |
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地の神の狂へる故か春遠し余震の地面に霰降り来る |
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震災を街に逃れし島人の方言は親し糸島訛り |
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漁師ゆえ玄界島に共同の住居欲しとふ組合長ら |
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ときめくや「おさん茂兵衛丹波歌暦」 |
オペラの舞台を観しと |
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薔薇咲けるオペラホールに西鶴の |
哀れ道行き「おさん茂兵衛」 |
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斎場に友と会い居り「今日一日在るが全て」と語り黙しぬ |
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昼暗く春雨しぶき出棺の友の遺影は抱かれ濡れ行く |
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