| ◇ 鶴田義光 五十音訓「療養川柳」-2◇ | |||||
| メーリングリスト「あのね会」に発表されたこの療養川柳第二弾は、鶴田さんがご自分の療養生活を、あらんかぎりの息を集めて、毎日一句、詠みためてこられたものです。 | |||||
| あ あしたまで生きて肺病み親の歳 | |||||
| い 生き物を長患いは慈しむ | |||||
| い 生き抜いたあかしの歌を謳いつぐ | |||||
| い 息切れは理解の外の闇夜行く | |||||
| う うつむきは意気軒昂で正すこと | |||||
| え 遠慮はしないさせない老いてから | |||||
| お 面白きことは素直に高笑い | |||||
| か カート引き道を譲られ交差点 | |||||
| き 今日も生き明日も当然生きるだろ | |||||
| く 薬飲む前にまじない唱えてる | |||||
| け 血痰の色を見つめる入院日 | |||||
| こ 転ぶこと命が掛かる歳になり | |||||
| さ 寂しさと息切れ忘れて眠りたし | |||||
| し 信じてる医師に苦情は勇気いる | |||||
| す 少しだけ我がまま勝手お許しを | |||||
| せ 背の丈が縮むと知って初老入り | |||||
| そ 袖通す腕の重さで病い知る | |||||
| た 大抵の苦痛に慣れた吾哀し | |||||
| ち 聴診の医師の変化を見逃さず | |||||
| つ 躓くな散歩開始の独り言 | |||||
| て 抵抗はそこまでと妻は言い | |||||
| と 年寄りのうわさを聞くと反射する | |||||
| な 泣きごとは今日で終わりの嘘哀しい | |||||
| に 入院の品はセットでいつも有り | |||||
| ぬ 抜け道も回り道もない肺の闇 | |||||
| ね 猫背から犬背に変えて若返る | |||||
| の 延び悩む散歩の道に曼珠沙華 | |||||
| は 鼻イジリ症状なりと学びたる | |||||
| ひ 人恋し夜の病室一人部屋 | |||||
| ふ 二日酔忘れて勢い失なえり | |||||
| へ 返事無き妻の背中に手を合わし | |||||
| ほ 欲しいもの柏手打って肺欲しい | |||||
| ま 間違いは直す治すが多過ぎる | |||||
| み 診る医師を患者も観ている診察日 | |||||
| む 無理せずに生きていけない病み加減 | |||||
| め 迷惑を掛ける辛さの要介護2 | |||||
| も もう一度取り戻したい春の肺 | |||||
| や やれやれの声も出せずにヘタる坂 | |||||
| ゆ ゆっくりと攻めくる病五月闇 | |||||
| よ 余命まで見えてくるよな遠めがね | |||||
| ら 「ラストチャンスがきた」「どれを選ぶかだ」 | |||||
| り 療養中倦きやすの吾飽きもせず | |||||
| る 涙腺を持て余したり母の夢 | |||||
| れ レースには周回遅れで棄権せず | |||||
| ろ 60代重度の不全ツケ重く | |||||
| わ 我がさだめ息切れを受入れること | |||||
| ん ん、で終わり恥じと誠の療養記 | |||||
|
|||||