鶴田義光 五十音訓「療養川柳」-2
メーリングリスト「あのね会」に発表されたこの療養川柳第二弾は、鶴田さんがご自分の療養生活を、あらんかぎりの息を集めて、毎日一句、詠みためてこられたものです。
 あ あしたまで生きて肺病み親の歳
 い 生き物を長患いは慈しむ
 い 生き抜いたあかしの歌を謳いつぐ
 い 息切れは理解の外の闇夜行く
 う うつむきは意気軒昂で正すこと
 え 遠慮はしないさせない老いてから
 お 面白きことは素直に高笑い
 か カート引き道を譲られ交差点
 き 今日も生き明日も当然生きるだろ
 く 薬飲む前にまじない唱えてる
 け 血痰の色を見つめる入院日
 こ 転ぶこと命が掛かる歳になり
 さ 寂しさと息切れ忘れて眠りたし
 し 信じてる医師に苦情は勇気いる
 す 少しだけ我がまま勝手お許しを
 せ 背の丈が縮むと知って初老入り
 そ 袖通す腕の重さで病い知る
 た 大抵の苦痛に慣れた吾哀し
 ち 聴診の医師の変化を見逃さず
 つ 躓くな散歩開始の独り言
 て 抵抗はそこまでと妻は言い
 と 年寄りのうわさを聞くと反射する
 な 泣きごとは今日で終わりの嘘哀しい 
 に 入院の品はセットでいつも有り
 ぬ 抜け道も回り道もない肺の闇
 ね 猫背から犬背に変えて若返る
 の 延び悩む散歩の道に曼珠沙華
 は 鼻イジリ症状なりと学びたる
 ひ 人恋し夜の病室一人部屋
 ふ 二日酔忘れて勢い失なえり
 へ 返事無き妻の背中に手を合わし
 ほ 欲しいもの柏手打って肺欲しい
 ま 間違いは直す治すが多過ぎる
 み 診る医師を患者も観ている診察日
 む 無理せずに生きていけない病み加減
 め 迷惑を掛ける辛さの要介護2
 も もう一度取り戻したい春の肺
 や やれやれの声も出せずにヘタる坂
 ゆ ゆっくりと攻めくる病五月闇
 よ 余命まで見えてくるよな遠めがね
 ら 「ラストチャンスがきた」「どれを選ぶかだ」
 り 療養中倦きやすの吾飽きもせず
 る 涙腺を持て余したり母の夢
 れ レースには周回遅れで棄権せず
 ろ 60代重度の不全ツケ重く
 わ 我がさだめ息切れを受入れること
 ん ん、で終わり恥じと誠の療養記
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