◇ 鶴田義光 《療養短歌 入院編》◇
この《療養短歌 入院編》は、2008年9月に急性増悪で緊急入院されてから、一喜一憂の療養中の自分の姿を短歌に託し、在りし日の姿を精一杯詠みこまれたものです。
10/19 朝起きて足の甲羅を押しみればへこみの浅さに希望の日ざし
刺す針の血管探り2度3度止血の綿の腕の白花 
10/23 寝返りの寝間着の乱れ直せずに皺を背負いて何時か眠りに
床擦れに痛みを避けて身をよじり夏樹推理に耽る秋の夜
10/26 呼吸器の風に激しく渇く口潤す配茶のグリーンも秋
10/27 回診を姿勢を正し待つ吾は
            「あれも聞きたい」「これも知りたい」
10/29 増悪よ痛めつけるか痩身を抗生剤で全面対決
10/31 向日葵に見送られつつの入院は窓のコスモスに小康を得る
11/ 1 「もう死んでいいが粘っている五臓」
             てつひこのうた吾を突き刺す
11/ 3 熱ありて輸液の滴頼もしく恵みめぐみと落下に呟く
11/ 7 リハビリは歩行器酸素カート引き
             さらに呼吸器にバッテリーあり
11/10 病友は戦友なりと見つけたり絆は深く共(友)に歓び
11/12 肺臓に張り付く痰のしつこさに伏せた姿勢でお出でおいでと
11/15 誕生日思わぬ指摘い・い・ひ・には珠玉の祝儀11月12日
痰の色見詰めて探る増悪の予兆がありや風邪初期の時
11/17 目覚めよく定時朝食待ち侘びて箸で手遊び童心のごと
11/21 柿色の夕陽に染まる夫婦岩二見が浦は静寂の中
風浴びる廊下の横のベッドから奥の窓際移れる善き日
11/23 生食の牡蠣の持込み禁止する病院姿勢は膾(なます)吹くごと
12/ 7 初雪を掬ってみたき衝動は温もり満ちた病窓の内
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