◇ 文芸川柳作家 森脇幽香里先生 の紹介 ◇
広島の川柳作家森脇幽香里先生が平成4年に句集「川柳・昭和に生きて」を出版した時、作家の田辺聖子さんが序文に「清くあたたかな 女の幾山河」と題して「・・そのまま近代社会史ともなっている。このへんが人事を詠む川柳の強みで、私にはたいそうおもしろかった」とあります。
幽香里先生は明治41年広島に生まれ、父君の影響を受けて女学校時代から川柳を始め、平成15年2月に95歳で亡くなるまで、文芸川柳の普及に活躍されました。
この間、広島で原爆に遭い、ご主人と共にアメリカ、スイス、オーストラリア等の海外生活も長く、幽香里先生の住みつくところに川柳が広がってゆく、という活動を続けてこられました。
一時は東京にも住み、晩年は広島に帰ってぬくもりのある川柳を育てられました。
「幽香里句集 川柳・昭和に生きて」から
    集まれへモンペ授乳の子を離し
    ヒロシマの水漬く屍となった川
    補聴器をすれば雑音まで聞こえ
    みんな善都会も人も寝しずまり
    母という姿子に泣き子に笑い
    船便でごっそり日本の味が着き
    童心はスイスも同じ凧を揚げ
    日本人だなと見交わす日本人
    切符買うドイツ語口に順を待ち
「作品集 さあおいで」から
    タンポポの種ふんわりと旅に立ち 
    灰踏んだ猫雑巾に叱られる
    シャボン玉すぐ割れる夢抱いて飛び
「幽香里原爆の記 川柳句集 捧げる」から
    美しかったB29にしてやられ
    逃げまどう両手に焼けた皮膚が垂れ
    焼け焦げたからだの中身生きており
    生きている一分の息で母を呼び
    見えぬ目へ見たい鏡をほしがられ
    水槽に首突っ込んで死んでおり
    原子炉のあとはどうなとではすまず
    核は今死んだふりしている平和
森脇幽香里先生の「川柳のホームページ」
「ホットの会」のTOPページへ 「文芸川柳」久保隅哲彦 寄稿文と趣味のページ