◇ 第43回日本呼吸器学会市民公開講座 ◇

あなたのまわりの呼吸器病
           予防・治療・つきあい方
  公開講座へ向けてのごあいさつ
  安心して温泉をたのしむために―レジオネラの秘密―
  喘息とこころの問題
  睡眠と健康のかかわり
  肺癌と告知された時にすること

市民公開講座にむけてごあいさつ
第43回日本呼吸器学会総会 会長 原 信之

福岡の地で、17年振りに日本呼吸器学会が開催され、そのサテライトとして16日(日)に市民公開講座を行うことになりました。「あなたのまわりの呼吸器病一予防・治療・つきあい方一」というテーマのもとに呼吸器疾患を専門にされておられる先生方にお話しを伺います。
近年、高齢化社会を迎え、また環境汚染の進行、遅々として進まぬタバコ対策などで呼吸器疾患は著しく増加しております。世界保健機構(WHO)は21世紀の世界における死亡トップテンを予測し、その中に、COPD(3位)、下気道感染(4位)、肺癌(5位)、結核(7位)の4つの呼吸器疾患を挙げ、予防と治療の進歩を大きな課題としております。
今回の公開講座では、皆様の身近な呼吸器疾患を取り上げ、その予防と治療に加え、そのつきあい方についてお話しをして頂くことにしております。1つは、最近、温泉との関リでマスコミでも取り上げられましたレジオネラ肺炎、2つめは我が国で500万人を越え増加傾向にある喘息の発症と症状の増悪に心がどのように関わっているか、3つめは、夜のイビキと昼問の居眠りを主訴とし、学業成績の低下や自動車事故などとの関連がいわれている睡眠時無呼吸症候群、4つめは、現在悪性腫瘍の中で死因の第一位にある肺癌の告知と、それに伴う心の動き、対応などについて、それぞれ専門の先生に事例をあげながら分かりやすく解説し、また質問にもお答えしていただきます。
多くの皆様のご出席をお待ちしております。
   司会:第43回日本呼吸器学会総会 会長  原 信之教授
        九州大学大学院医学研究院心身医学 久保千春教授
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安心して温泉を楽しむために一レジオネラの秘密一
九州大学大学院医学研究院細菌学教授 吉田真一先生

昨年(平成14年)7月、宮崎県日向市でレジオネラという細菌による肺炎の集団発生があり、患者295名(確定診断34名)が発症し、7名が死亡した。8月にも鹿児島の東郷町で確定診断9名、死亡1名を出すレジオネラ肺炎の集団感染があった。
患者さんはいずれも循環濾過式入浴施設を利用しており、この浴槽水がレジオネラ肺炎の感染源であった。平成12年にも静岡県掛川市の温泉施設と茨城県石岡市で死者を出すレジオネラの集団発生があり、やはり感染源は循環濾過式の温泉または公衆浴場であった。憩いと癒しの場として日本人に最も人気のある「温泉」がなぜ恐ろしい細菌性肺炎の感染源となるのであろうか。
レジオネラという細菌の性質を調べるとなぜ循環濾過式浴槽がレジオネラの増殖の場となるのかわかってきた。レジオネラの秘密を解き日月かし、市民の皆さんが安心して温泉を楽しめるような方策を見出したい。
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喘息とこころの問題
九州大学大学院医学研究院心身医学講師 十川 博先生

喘息を抱えながら毎日を暮らすということは大変なことだと思います。ある人は小走りしても発作が起こるし、ある人はお酒を飲んでも発作が出てしまいます。ですからいろいろなことに気を配らないといけません。それでは発作が起こらないようにするにはどうしたらいいのでしよう?それは2つのボイントがあると思います。
一つは薬をきちんと使うことですが、もう一つ大事なことは日常生活に気をつけることです。いくら良いお薬をもらっても、不規則な生活を続けたリ、ストレスをためこむと発作が出てきてしまいます。ストレスにもいろいろありますが、一番やっかいなのが人問関係でのストレスです。例えば、あいさつをしたのしなかったなど、ほんのささいなことでも人問関係は崩れてしまいます。この難しい人問関係を上手にやっていくにはどのようにしたらいいのでしょうか。
今回は私達が臨床のなかでここが大事だと思ったところを皆様と一緒に考えていきたいと存じます。喘息を上手にコント□一ルするためには、身体の健康を守ると同じように、こころの健康を守ることも必要であると提言いたします。
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睡眠と健康のかかわリ
名嘉村クリニック院長  名嘉村 博先生

動物はなぜ睡眠をとるのだろうか。人問はどうして生涯の約3分の1も睡眠に費やすのだろうか。睡眠とはなんだろうか。睡眠不足や睡眠障害は個人の健康とどのように関係しているのだろうか。
睡眠障害は不眠症やいねむり病ともいわれるナルコレプシー等の睡眠そのもの病気といびきや睡眠時無呼吸症候群などの睡眠呼吸障害に分けられます。成人の10%は何らかの不眠があり約3%は睡眠時無呼吸症候群に罹患しているとされています。睡眠障害ほど罹病率の高い病気は他にあリません。
睡眠障害は個人の健康のみならず交通事故や産業事故などとのかかわりから社会経済的にも大きな損失を与えています。しかし現代社会では睡眠時闇はどんどん短くなりなにかというと睡眠は犠牲にされています。運動、栄養、喫煙、環境などに比べて睡眠にたいする関心は高くありません。
今後睡眠について小学校や中学校の教膏にとりいれ医学や医療の中にも領域を広げる必要があります。ねむけは睡眠障害の徴候であリ今回はねむけを中心に睡眠と健康についてお話します。
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 肺癌と告知された時にすること
九州大学大学院胸部疾患研究施設助教授  中西洋一先生

病院の待合室で何となく胸騒ぎを覚えながら順番を待つ。「呼吸器科受診の○○様〜」呼び出しの声におほつかない足取りで診察室へ・医者はめがね越しにさも自然な笑顔を浮かべて、検査結果を報告する。
「○○さん、この前の内視鏡の検査結果ですけど、レントゲンで写っていたあの影、実はあれ癌でした。」「?????」「残念だけど、肺癌だったんです。」「?????」
 頭の中が真っ白になって何も手がつけられなくなる人
 何で自分だけがこんな目に遭わなけリやいけないんだと、
 世の中の不条理に怒りを覚える人
 妻や子供の行く末を考えて深く落ち込む人
 酒に溺れて自暴自棄になる人
反応は、その人の性格、置かれた立場、体調の具合で様々でしょう。しかし、いつまでもうずくまっているわけには行きません。自分と自分の家族を守るために、やるべきことは山ほど有ります。癌はけっして簡単な病気ではないけれど、かといって手の打ちようのない病気でもありません。絶望の中から希望の光を見いだすために、小さな光明をより大きな光明とするために、人生とあらためて向き合うために。この市民公開講座では、そんな時に何をするべきか何ができるかをお話ししたいと思います。


この中の「肺癌と告知されたときにすること」を講師の中西先生のご承諾のもと、会報誌「ホット63号に」掲載させていただきましたので、是非[次へ]にお進みくださいませ。
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