◇ 災 害 (地 震) 対 策 ◇
ホット69号より
 《地震対策について》一酸素業者の立場から
帝人在宅医療兜汢ェ支店 統括 尾林照男
◇ 目 次 ◇
 1.はじめに
 2.災害対策
  【平時の準備】
  【緊急時の初動】
 3.新潟中越地震の状況
 4.啓発活動
  パンフレット:もし災害が発生したら
  パンフレット:災害への備え
 5.おわりに

1.はじめに
1995年1月の阪神・淡路大震災、昨年10月の新潟県中越地震そしてまだ記憶に新しい今年の3月20日の福岡県西方沖地震と大規模な災害がたびたび発生し、在宅酸素療法に関与しているテイジンといたしましては、その都度、緊急体制を敷き対応して来ました。
直接被害のあった福岡県西方沖地震では、マグニチュードの規模の割りには、前二者に比べ、被害が比較的軽微で済んだことは、まさに不幸中の幸いと言っても良いでしょう。しかし、かつて、これほど大きな地震を経験していない福岡県民にとっては、本当に吃驚し肝を冷やされた方も多かったと思います。
大規模災害において、HOT患者にとって特に問題なのが、停電による酸素濃縮器の停止です。本年6月に日本呼吸器学会から出された「在宅呼吸ケア白書」の患者アンケート結果を見ても、HOTを始めてからの不安は何かとの質問に対し、57%の患者さんが「停電、災害が不安である」と一番に回答されています。
また、災害後の酸素確保において重要となるのが、交通アクセス、通信関係です。
今回の福岡県西方沖地震においても、高速道路、幹線道路を始め、至るところで交通が遮断され、電話も掛かりにくい状況に陥りました。現に、私共から患者様への安否確認の際、なかなか電話が繋がらず、苦労いたしました。又患者様からボンベの配送依頼をされる際にも大変だったと思います。ボンベの配送にも時間が掛かりご迷惑をお掛けしたのではないかと思います。
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2.災害対策
在宅医療機器の供給業者のテイジンとして、地震等の災害に備えてどのような対策をしているかについて、少し述べてみたいと思います。
私共は、先の阪神・淡路大震災の教訓を元に1995年に災害対策マニュアルを制定し,平時の準備と緊急時の初動対応を決めています。
【1.平時の準備】
施設・患者情報の整備・・・例えば、患者様リストを被災地以外でも常に取り出せる状態にしておくこと。
高流量、独居の患者様及び導入初期の不慣れな患者様を優先対応すること。
患者様の第二連絡先まで把握しておくこと。また、機器の備蓄として1箇所に集中させず近隣で融通しあえる状態にしておくことなどを決めています。
【2.緊急時の初動】
支援本部を被災地域以外に速やかに設置し、情報収集及び応援人員、機材、生活物資の補給にあたること。
患者様の安否確認の方法は、現地及び支援本部が中心となって行うこと。又、行動基準として、二次災害防止のため2人1組作業、ヘルメットなど保護用具の着用徹底などを決めています。
また、マニュアルの要点を名刺サイズにまとめ、社員は常時携帯しております。
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3.新潟中越地震の状況
昨年10月の新潟県中越地震の際のHOT患者様の安否確認状況等は、以下のようなものであったようです。
・ マニュアルに沿って、本社総動員で優先患者様から順に連絡が付くまで電話をかけましたが、当然のごとく電話が繋がりにくく、現地でも直接病院や避難所を訪問し捜索しました。3日が経った段階で未だ100名近くの患者様と連絡が取れなかったため、急遽、新聞にメッセージを掲載したり、災害伝言ダイヤルへメッセージを入れたりしましたが、反応はなかったとのことです。結局、患者様全員の安否が確認できたのは、被災後5日目のことでした。
・ 患者様宅の停電復旧状況はどうだったかといいますと、72時間で90%を超えたそうです。が、24時間内での停電復旧率を見ると、71%だったそうですが、阪神・淡路の90%と比べると遅く、その分、初期のボンベ依存率が高かったようです。
・ 患者様の捜索にもっとも苦労したのが、避難所だったそうです。避難所数は最高で603箇所にのぼり、患者様の近所の方に「避難所に行ったわよ」と言われても、多くの場合、どこの避難所に行ったか分からず、患者様1人を探すのに時間が掛かったそうです。教訓として、可能な限り「どこどこの避難所に行く」とのメモを残して頂ければ連絡がとりやすいと思いますので、この場を借りてお願いしたいと思います。
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4.啓発活動
「災害への備え」としてテイジンは下記のような災害啓発用パンフレットを作成しています。患者様・ご家族向けに作りましたパンフレットです。日頃の「災害への備え」はどうするか。「もし災害が発生したら・・」どうするかを分かりやすく説明しています。患者様に配布しておりますので、いつも身近に置き、災害に対する備えの参考にご活用いただけたらと思います。
パンフレット:もし災害が発生したら
パンフレット:災害への備え

5.おわりに
「いざ!」という時に、マニュアル通りの行動が取れるかどうかは、日頃の訓練も大事ですが、危機対応への感度の高さを常日頃から醸成していくことが大事であると認識しております。
当然、限界もあろうかと思いますが、出来る限りの対応を行い、患者様にご安心いただけるよう努力していきたいと思っております。
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