◇ ホット患者がプールでの遊歩に挑戦 ◇
メル友との情報交換で実行出来ました!
=角 幸子さんのメールを中心に辿ってみました=
「HOT患者も、何とかプールに入り、歩くだけでも出来ないものか!」との望みを叶えたいと、ホットの会のパソコンのメールに幸子さんが書き込まれたのは去る6月17日でした。いつもユーモァ溢れるメールを発信される幸子さんですが、「HOT生活に入る1年前に、1万8千円で買い求めた新しい水着を思い出すごとに、また、市営プールの前を通るたびに、プールに入りたいとの思いは募るばかりです」「どこか、好いプールはないでしょうか」との問いかけでした。
私どもホットの会では、パソコンをしている人で「あのね会」という、一斉メール交換の会をつくり、会員仲間で情報を共有出来るようにしています。
その日の夜、早速、熊本市の多美子さんから「私はHOTになってからもよくプールに行きました。カートにナイロンを被せてカニューラを何本も繋ぎ酸素を出します。プールの中央に置き、行ったり来たりしました。気持ちが好いので身体が軽くなりました。今は、酸素が増えて、体調が良くないのでやめていますが」との返事のメールが来ました。お二人とも熟年世代の女性です。
同月26日には、多美子さんから「先日、温泉センターに行き、そこの露天の水風呂に入って来ました。酸素は2Lボンベをナイロン袋でスッポリ被せて1時間半以上もゆっくり入っていました。どうか幸子さんも挑戦してみて下さい」と。
幸子さんは、翌27日、直ちにメル友に「福岡市内の温泉センターについての情報を、何方かご存知の方は?」と尋ねました。
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反応は早くて、同日の午後には洋子さんと衛さんから、同じ施設の紹介が寄せられました。それは温泉プールではなく、温水プールでしたが、、。
名称は「さんさん・プラザ」で、場所は福岡市南区清水1丁目の市立障害者センターの中にあり、障害者手帳があれば事務所で手続きしてOKとのことでした。プール(25b)には二人の監視員がついていて、看護師さんも常駐している。付き添いの家族の人も一緒にプールに入る事ができる。携帯酸素ボンベは水中で身につける方法とか、相談に乗ってくれるはずです、と。洋子さんは、ご本人が付き添いで一度行かれた経験もあるとのこと。
衛さんは、体育系の息子さんから聞いたことがあった同センターの山口係長さんに電話して聞かれた結果、現在、在宅酸素の人でプールで水中歩行している人はいないが、医師の意見とか添書があれば好いのではないか、などの知らせでした。同日の夜、喜んだ幸子さんからは、洋子さんと衛さんに、お礼のメールを入れられました。
幸子さんは「腰が悪いので、負担にならないプールが好いと言われて20年前からプール通いをしていたが、HOT生活に入りすっかり諦めていた。こんな情報を直ぐに得られるなんて、本当にパソコンをしていて好かった。皆さんのお陰で、また、プールで歩ける希望が出て来ました、嬉しい!」
悦子さんからは「プールの情報、わかってよかったですね。私もお二人の積極的な姿勢に刺激を受けて、思い切って水中歩行だけでも、と考え中です。そして提案です、腰まで海に浸かって棒付きの笊であさり貝≠採っていた人が、紐を通した発泡スチロールの箱を浮かせて、その中にかなりの量のあさり貝を次々に入れ込んで引っ張っていました。浮いているので、力はいらないようでした。酸素ボンベも同じように出来ないでしょうか?」
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翌日、多美子さんからのメールは「さすが福岡市内です。色々と情報が入って良かったですね。熊本市内の公共のプールは子供が多くて、身障者にはムリです。会員制のプールに1週間に2回ほど行きました。今後も行きたいです。」
同日、幸子さんは「悦子さん、いい知恵ですね。しかし適当な発泡スチロールがなかったので、20gの水が入っていたナイロン袋に酸素ボンベを入れて、太いゴムで括って水に浮かべたら、ヤッタ!大成功。バッチリ浮かびました。これなら可笑しくない、と自分で笑いました。」との喜びのメールを入れられました。
次の日、幸子さんから衛さんへ「さんさん・プラザのご紹介頂いた担当者に電話で問い合わせたところ、主治医の了解と注意を聞いて来るように、とのことでした。一度、どんな所か、他人に迷惑がかからないか、見に行きます。」
7月4日、幸子さんから、多美子さん、衛さん、洋子さんへ。「主治医に会おうと外来日に行きましたが、プールのことばかりが頭にあって主治医のお休みを忘れていました!代わりの先生にプールのことを聞きましたら、『貴女は肺気腫だけで他の病気がないから、酸素をしていたら大丈夫。良くは判らないが水圧があるから首まで水に浸からない方が良い。運動は無理のない程度だったら好いでしょう。』とのことでした。皆さんのお陰で、大きく一歩前進です。」
 同6日、幸子さんから、プールに入るための準備として、施設の見学に行かれた報告記が寄せられました。
「本日午後、さんさん・プラザに行きました。 
まず、“さんさん”の意味ですが、“する、見る、かたるスポーツ”の三つの意味だそうです。館内を案内して貰い、書類の手続きをして、カードを作って頂きました。
さんさん・プラザの25mプール
施設は、トレーニング室(17種類の機器)、卓球室、囲碁交流会、談話室などがあります。無料ですし、1日楽しめそうです。暑い時は半日過ごせます。みなさん、いかがですか。
呼吸不全の障害者では私がプールに入るのは初めて?だから、色々と大変ですが、何でも第一号になるのも、好いことかも知れません!」
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同月8日、幸子さんから、衛さん、あのね会の皆さんへのメール。「ご心配頂きましたプールのこと、念願の夢が叶いました、感激の涙です! “七夕さまで終わらないようにお願いこめて!”
7月7日、早速、実行に関わる3件の関門を体験しました。
第一関門:自宅からプールのあるセンターまで私が使用している『電動四輪』で行けるか?です。直進で3`位、約30分位かかります。難関の1つは、タクシーから見たのですが近道の陸橋の階段と思ったのですが、しかし、よく見ますとスロープになっているのが見えました。ヒョットして行けるかも?冒険の楽しみが増えます。第一関門クリアです。
第二関門:衛さんから紹介された係長さんにやっと会い親切に相談に乗って貰えました。ナイロンの袋に入れて浮きの上に載せて歩く人は初めてとのこと。浮き輪を探して頂き、何とか試すことになり、良かったらOKになります。
これまでに二人程、酸素を使用する方が来られたがホースを長くすると、周囲の人達が引っかかると困るので、ホースのことで、断ったのだそうです。もう二人は、酸素を付けずにプールに入られるそうです。
第三関門:いよいよプールに入りました。
看護師さん、指導員さん立合いで試してみることに。“緊張しまくり”でした。試験を受けている感じ?でした。私は、パルスオキシメーターを持ちません。初めて肺気腫で入院して歩いて酸素量を測ったように、ここでも指に着けて一挙一動の数値を見ました。水着に着替える前は96、着替え後は92に下がる。指導員と共に、自分で酸素ボンベを持ち水に入り25bを2分30秒で歩いた時85に下がる。2分休憩すると92〜96に上がる。二回目は50b歩いたら82に下がる。休憩3分で96に上がる。
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自分で好きなように歩きたいと、掴まって身体を浮かしたり、ひねったり30分≠オましたが、心配はなさそうです。一番酸素量が下がったのは、水から上がった後、水着の着替えの時、酸素量82に下がっていました。一番苦しかったです。
看護師さんから『酸素量80を切ったら、また脈拍130を超えたらダメです』と言われました。今日は散歩の時と同じ位に休みましたが、酸素とか脈拍のことを把握してみますと、身体のリズムの正確さに驚きました。
同月9日、幸子さんから、幾つかの関門を通過したことへの感謝を込めて、改めて 多美子さんはじめ、声援を頂いた皆さん方へ感謝のメールが出されました。
「多美子さんに背中を押して頂き8年振りのプールです。このプールの水の温度は31度です。市民プールと違いヒヤ〜≠ニした冷たさは感じずに済みます。とても気持ちが良いです。常時、看護師さん、指導員さんもおられるので安心してプールに入られます。1才から10才までの障害をもった足の立たない℃q供さんを、一人一人抱えてプールに入れている姿に涙が出そうになりました。30分も水に入っていると子供達は生き生きとして来て、動かない足でもリハビリしているのです。私は見学しているだけで頑張ろうと、元気を貰いました。」               
7月16日、幸子さんから二度目のプール行きの報告です。「今日は二度目のプール行きでした。あの陸橋はスロープがあり、電動四輪車で上がるのは、丁度、ジェットコースターがカタカタと登る時のように、胸がドキドキで楽しみです。プールの実況は写真の通りです。デジカメを持って行き、指導員さんに写して貰いました。浮き輪は借りています。四角い物は酸素ボンベがひっくり返らぬように係長さんが発泡スチロールで作って下さった物です。今日は40分にわたり前や後に歩き、思う存分に楽しみ、大満足でした。」
 [編集者の一言]
この記事はホットの会が、メーリングリストというメール交換方式で、交信しているメル友の会で話題になった「在宅酸素をしながらプールでの遊歩に挑戦」を、会報編集役員の楢崎恒基さんが纏められました。
何事にも積極的に取り組む角幸子さんの呼びかけに応えていただいた熊本の多美子さんほかの協力を得て、福岡市立障害者センターのプールで夢が実現しました。幸子さんの行動力に敬服しますし、見習いたいものです。
ただ一つ疑問点が出てきました。それは、運動判断の基準値として看護師さんが示された「酸素量80を切ったら、また脈拍130を超えたら駄目です。」というところです。酸素量80%とは、動脈血酸素分圧では44トールで随分と低い数値になります。そこで、福岡病院のリハビリ棟のスタッフに確かめてみました。その結果は次の通りです。
『一般に運動の目安として、酸素飽和度は90%(酸素分圧60トール)とされているが、呼吸不全の患者さんは、それを完全に維持するのが困難な場合もあり、そのような場合、85%以上は保つようにしている。』
なお参考意見として、「プールにしても入浴にしても、最も酸素が下がるのは衣類の着脱の時なので、出来るだけ椅子に腰掛けてゆっくりと行動するが、カニューラを外す時間は短くするように心掛けて下さい」ということでした。
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