◇ 会員の 寄稿文 ◇
 カニューラ延長チューブの処遇?
福岡市南区  堀 義人
8ヶ月前に私たち父娘は賃貸マンションに引っ越して生活を始めました。一緒に連れてきた酸素濃縮器も居座っています。いや、娘にとっては命の支えとなっています。住まいの間取りは横長なので、娘の部屋(寝室)から台所や浴場や洗濯器置き場までは遠く、カニューラの延長チューブは最大12m(4本つなぎ)となっています。そしてその延長チューブは、いつもは床上でトグロを巻いているのです。
問題となっているのは、部屋から出る時に延長チューブ<つなぎ目で10oの太さ>が部屋の扉下(床から15oの空間がある)に折り重なって、挟まることがしばしばあることです。目的地の台所や洗濯器置き場に行くまで、カニューラ・チューブが強く引きはずされ、急いでいるときなどは、本人が転倒したこともありました。
そこでこの延長チューブのトグロ巻き状態をうまくまとめる方法はないものかと、昨年暮から親娘で思案してきたところです。そして、最初に考えたのは「部屋の入り口の扉の固定部分上部に滑車をぶらさげ、そこに延長チューブを通して、部屋からでてゆく」というものでした。
つまり、下からでていた延長チューブをいったん上に引き上げて出すという方法です。試作(左写真)で実験したところ、安物の金具でできた滑車のまわる音が「チリ、チリ、チリ、・」と鳴り、実行者の娘は「なんだか猫のお出ましみたい!」といまいちの評価でした。しかし、これでチューブが扉に挟まれての転倒などはほぼ解消したかに見られました。でも欠点は、板間の部屋にチューブが無造作にトグロを巻いているのがみっともないと思われるし、不衛生な感じもします。
そこで、これを部屋にある机の前の壁にひっかけることを考えました(右写真)。作成材料は、ダンボールを切り抜き、セロハンテープで両端を固定し、百円ショップで買った金網とS字フックを加工してしばりつけたものです。これなら部屋の出入りには邪魔にならず、トグロ巻きは解消します。
ただ、これは部屋を出る時は良いのですけど、戻ったとき、延長チューブを壁のフックにひっかける手間が必要です。実行者の娘は、現在のところ、このひっかけ作業が面倒くさいと、しばしばこぼすこととなり、しまいにはカニューラ・チューブを外して部屋を出てはバタバタと用事をすますことすらありました。その間、とても苦しい思いをしながら・・・。娘にとって現段階では、やはりトグロ巻きのほうがよさそうです。引っ掛けが面倒くさいというのは、その引っ掛け方にこつがあるからです。延長チューブをスムースに引き出すためには、引っ掛け方を「波型」に掛けることが必要です。ただ丸く引っ掛けると、引き出すときにフックにからまるからです。フックの取りつけ間隔をも少し広げると、引っ掛けやすくなる可能性もあります。
「フックにひっかけることが面倒くさい!」ならばと、つぎに考えたのが縦長のダンボール箱に収納する方法です(右写真)。
これは縦45p巾8p、高さ40pのダンボール箱です。これに延長チューブを酸素濃縮器に近いチューブから、入れてゆくのです。これなら、簡単にただ入れるだけですので、それほど手間はかからないようです。現在、娘は短期入院中なので、私が実験したらうまく行きました。娘が退院してきたら、実際に試して、その実用性と感想を聞きたいものです。
さてさて、間題なのは、「延長チューブの巻き戻し」の自動化です。その例は、電気掃除機やお庭の巻き取り式ホースによる散水器に見られます。しかし、これらは回転する軸に、電気や水が直接つながっているからできるのであって、酸素の場合は、現段階では難しいかも知れません。
この巻き戻し対策として考えているのが、理想論ですが今、二つあります。
まずひとつは、問題の巻き戻しの手間を機器で行うとするものです。つまり、巻き戻す方法を、昔のテープレコーダーのヘッド部分の機器で、「チューブを挟んで巻き戻す」というやり方です。しかも、これはリモコン式が理想で、部屋に戻りたいときに手持ちのリモコンを押せば、ゆっくりと巻き戻して、一定の箱に収まる、といった仕組みです(部屋を出るときは、ヘッドの部分は開放されているように設計)。
もうひとつは、酸素濃縮器の横に、直径60p前後、両側に枠のある巾5pくらいの回転盤を取りつけ、その軸に酸素の取出口がついたものができれば良いのではないかと思うのです。昔の映写機で、フイルム巻取り器のようなものを想像していただければ、おおよそのイメージが沸くのではないでしょうか?その回転盤に延長チューブを巻きつけておき、部屋をでるときは、その回転盤は低抗なく軽く回り、部屋の戻ったときは、回転盤の一部にとりつけた把手を回して、延長チューブを巻き戻す、これもできれば低速リモコンモーターをつけられれば、理想です。
このような理想的な夢みたいな設計は、私たち素人にはとてもできません。専門業者に設計の可否をお尋ねしたいものです。そして、できるだけそれに近いものができることを、患者とその家族は待っているものです。
〈平成17年3月1日記〉
=編集者・楢崎 恒基 追記=
本稿の筆者、堀義人さんは、ホット会員の堀薫さんのお父さんです。
薫さんはこれまで一人で福岡市内で療養しておられましたが、昨年お父さんが宮崎から移って来られ薫さんと同居されました。お住まいは薫さんが通院している九州中央病院に近い賃貸マンションです。薫さんは、小児喘息の頃から旧南福岡病院に入院されており、西間福岡病院長や、九州中央病院の十川先生からも長く主治医として診療を受けて来られているそうです。
新居への入居を機会に、これまで薫さんが在宅酸素のカニューラの延長コードの処理で一人悩んで居た事を知り、室内での延長コードの処理方法等考えられていることを聞きまして、お願いしてその方法、設置の工夫などを記述して頂いたのが本文です。
内容は、ダンボールの再利用や百円ショップで買い揃えられる材料のことなど、家族や本人の手で何とか出来るのでは、との希望が湧いて来るような具体的なものです。勿論、堀さんも言及してありますが、専門業者に依頼する事も必要でしょう。しかし、とりあえず自分達でも出来そうだと思われる面もあり参考にして頂けたら堀さんもお喜びになられるでしょう。
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